すきま道

夏の終わりの昼下がり。
どこへ続くのか木造アパートと古い家の境にある細い道を見つけた。ひと一人分の幅しかないが一応は人の道だ。元気に茂った足下の夏草の下に、アスファルトが見える。
しばらく歩いて行くと右手に廃屋が現れた。平屋建てだがしっかりした引き戸の玄関。田舎のおばあちゃんの家といった風情である。割れたガラス窓から中を覗くと、畳部屋の真ん中できらりと強く光るものがある。もう少し近くで、と夏草をかき分けて近寄ると蜘蛛の巣に派手にひっかかった。手で払い光るものを探して中を見直すともう何も光っていない。畳部屋の中央にあったのは、青々とした大きな一枚のヤツデの葉だった。
また道を進む。
いよいよ山道になってきたと思っていると周囲が開け、古びた石のアーチが現れた。
その手前にお地蔵様と三叉路だ。ここからはどの道も土の小道である。右手はゆるやかな勾配ながら更に山奥へ続き、左手は急な坂道に沿って錆びた手すりと一つ山を越えた先の町の名を示す錆びた看板が立っている。アーチの先に続く正面の道は陽の傾きの所為でずいぶんと陰気に見えた。
そろそろ戻ろうか、しかしもう少し。私は正面の道にした。その前に背負っていた荷物から水筒を取り出し、アーチに寄りかかってお茶を一杯飲む。
腕時計はもう夕方の時刻だった。
「帰るところ?」
足音も何も気付かなかった。正面の道、数メートル先におばさんが二人にこにこして立っている。
ええ、そうです。そう、まだまだ暑いねぇ。気を付けてねぇ。
少しだけ言葉を交わして、二人はアーチの向こう側へ去って行く。さくさくと歩く後ろ姿を見送った。足下を見るとこの夏草の道だというのに裸足にサンダルだった。
水筒をしまって荷物を背負い直し、再び歩き出す。アーチの先の道はこの小さな山の端を通っていた。視界は開け、何を作るところか工場が建っている。人の気配はないが中央の煙突は陽炎を作っていた。
もう、吹く風が涼しかった。あと少しだけ歩いてみようか考えたが帰り道が難儀になりそうでやめた。
おばさん達は家に帰るのだろうか。山の端を通るこの道の先には電柱ほどの太さの枯れ木が斜めに倒れている。
道は、枯れ木の先の夏草の中へと消えていた。

I walked along a narrow mountain path, lured by a green bush.
I never saw the presence of a living person.
When I was getting anxious, I met two old ladies.
We briefly greeted each other and parted.
When I looked back, there was no way of a human being either in the direction in which they appeared or in the direction in which they left.
But, they were kind.